ハクサンチドリ (Dactylorhiza aristata)

 ハクサンチドリは本州北部から北海道まで広く見られます。ススキの生えているような草原を好みます。絶滅危惧種ではありませんが、かなり減少している地方もあるそうです。花の色は普通は赤紫ですが、白、ピンク、紫まで様々です。また唇弁が他の花弁の色と異なるものもあり、花色にはかなりの変異があります。園芸的な価値は高いのですが、まだあまり注目されていません。このランはラン共生菌のジェネラリストであるRhizoctonia repens と共生して発芽します。下の写真は共生発芽したプロトコームです。根毛のような仮根を伸ばし、ここから共生菌を呼び込みます。 共生発芽も無菌発芽も比較的簡単ですが、植物体の鉢上げ後の管理が、なぜか難しく、私は大分枯らしてしまいました。生長を促進しようと思い、腐植の多い栄養の豊富な土壌に植えたため、貯蔵根が腐敗してしまったのです。ピンクの株も白い株も枯らしてしまいました。痩せた土壌が適しているようです。また種子を集め直し、再度挑戦する予定です。

 

 写真はかつてあったコレクションの寄せ植えです。ここから種子を集めて発芽させ、このようなものを大量生産しようと目論んでいたのですが、残念。

 レブンアツモリソウのイメージキャラクター「あつもん」は少しずつ知られるようになりました。その向こうを張ってハクサンチドリの「ちどりん」を作ってみました。寄せ植えにタグとしてつけるつもりでしたが、栽培は失敗続きで、彼女が活躍できるのは、かなり先のことになりそうです。

 

 無菌発芽由来のハクサンチドリが2株咲きました(下の写真・2015.5)。私の第二の趣味は畑仕事で、野菜類はほぼ自給しています。9年ほど前に畑にハクサンチドリを植えましたが、2年ほどで全て枯れてしまいました。ところが、今年(2015)になって、畑から少し離れた森の縁に一株のハクサンチドリが咲いたのです。花の色はこの写真のものとほぼ同じでピンク系です。周辺にはノビネチドリはわずかに見られますが、ハクサンチドリは全く分布していません。畑に植えたハクサンチドリの種子が飛び、数年以上かかって開花に至ったものと思われます。共生菌がいる場合、プロトコームはかなりの長期間生き残れることを示唆しています。