レギナエ (Cypripedium reginae)

 北米原産のアツモリソウです。和名はありません。花がとても美しいので、英名の一つには「Queen's Lady's slipper]とQueen が入っています。ここでは便宜上、レギナエと呼びます。北米には広く分布しますが、場所によってはかなり減ってきており、その原因は乱獲や鹿の食害だそうです。葉に毛が多くあり、それがアレルギーの原因になる場合があります。共生発芽も無菌発芽もできます。発芽率はレブンアツモリソウより高いのですが、成長速度はレブンより遅いです。この写真は共生発芽したレギナエのプロトコームです。

 共生発芽の場合は、貧弱な培地の栄養を菌がまず吸い取り、それをランの種子がもらうので、生長は遅くなります。生長を促進しようとして培地の栄養を高めると菌が元気になりすぎ、ラン種子は枯れてしまいます。絶妙なバランスが必要なのです。これに比べて無菌発芽の培地は栄養豊富なので、生長もかなり早くなります。しかし、かといって栄養を与えすぎると発芽したプロトコームは褐色になり枯れてしまします。この場合も「適度」な栄養が必要なのです。

 

 無菌発芽させた株は、播種後最短4年で開花しました。右側は蕾です。写真の株は草丈が15cm程で、大変かわいらしく見えました。唇弁の色は白からピンクまで様々です。ピンクのものは唇弁の内側にははっきりしたピンクのスポットがあり、これが表側に染み出してぼやけたピンクの縞模様になります。かなりオシャレな花です。

 

 

 若い株は草丈も低いのですが、年を経て株が大きくなるとともに草丈も伸び、1m近くになります。 あまり背高のっぽになると、「かわいらしさ」が無くなるので、レギナエとレブンアツモリソウを交配して、草丈の低いレギナエを作りたいと思っています。しかしレギナエはレブンアツモリソウより半月ほど後に開花するので、開花期が合いません。そこで雪解け時にレギナエの鉢を室内に取り込みを開花を早めてみました。目論みは成功し、レブンアツモリソウとレギナエのツーショットを撮ることができました(下の写真)。背丈が異なるので、レブンアツモリソウには下駄をはかせています。花粉塊を採り、互いに受粉させてみましたが、残念ながら結実には至りませんでした。遠縁のため交配できなかった可能性もありますが、来年再度試してみる予定です。

 2015年は30株以上が開花しました。一つの花茎に二つの花が咲いたものもあり、二つの花の唇弁のピンクの度合いが異なったものも見られました。唇弁のピンクの色は安定していないようです。

 

 今までは、無菌培養で育てた苗は秋に冷蔵庫に入れてシュートの休眠を打破し、4月に鉢上げしていました。冷蔵庫に多くの苗を入れておくとエチレンが発生して苗が徒長し鉢上げ後に枯死してしまうことがあります。それを防ぐためと低温処理を簡便に行うため、今年は9月に苗トレーに植え付け、秋を経験させて徐々に寒さに慣らし、越冬させました。80%以上が無事越冬し発芽しました。